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C. 考察

 

本調査研究のプロジェクトは本報告書の共著者である山内により発案された。きっかけは、現在common diseaseに対して慣例や経験からその薬剤の使用が行われている感があり、小外傷後の抗菌薬ではどうかと考えたからである。内科系では、感冒に対する抗菌薬投与の是非が論じられている3)4)。Lancetの最近の報告では、314名のcommon coldと診断された患者のうち75%は鼻咽頭の培養が陰性であったとし、感冒時の過剰な抗菌薬投与に関して注意をうながしている4)。外科系ではこのようによくふりわけられた大規模な研究報告がきわめて少ない5)。本プロジェクトの発案者である山内は、2年間の後期研修を自治医科大学附属大宮医療センター外科及び同大臨床薬理で行った。在籍中は、外科手術とホルモンサイトカインに関する仕事を行い、英文誌に投稿している6)−9)。現在は、自治医科大学卒業生の義務として診療所に勤務し、活躍している。彼の外科医としてのキャリアを生かし、診療所に勤務しながら継続してできる臨床研究10)が、本プロジェクトのねらいである。
今回の一次調査で、小外傷術後に無条件に全例投与している人が約50%であり、第一選択薬はセフェム系抗菌薬が大半であった。投与日数についても3日間投与するものが約70%であり、その理由等も今後検討する必要がある。きわめて重篤な副作用を経験した卒業生もあり、外科手術における降圧療法のprojectl1)と同様に今後は副作用に関する情報とその対応について組織だった対策が必要と思われた。
D. 今後の展望

 

前述の結果を受け、別紙5のような前向き研究を計画した。この前向き研究に参加いただける方は、登録してもらい班員として、今後の前向き研究に参加してもらう予定である。今後もこのような手法を用いて発案者が総括者として臨床研究ができるように、地方に勤務する外科系医師の臨床研究の援助をしたいと考えている。

 

 

 

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